RADAR CHART POWER (RC-POWER)®でのランキングは、観点別項目でバランスよく得点している順です。点差のある順位は、判断の目安になります。
RC-POWERについては、RADAR CHART POWERをご参照ください。
例えば、観点別得点のレーダーチャートを見比べて、数ある商品からひとつを選ぶとき、思い入れが強い観点項目を重視しつつも、なるべくバランスよく得点の高い商品を選びたいところです。
観点別項目からバランスよく得点している順のランキングがあれば、順位と重視する項目得点を合わせて判断できるため、満足できる選択になるでしょう。
観点別得点をまとめたランキングについて、観察、総得点、RC-POWERの3つからバランスのよい高得点順のランキングについて考えてみます。
(1)、(2)、(3) の3つの商品について5つの観点から性能評価が行われ、観点別項目で100を満点とした得点は表1で示され、図1のレーダーチャートでも示されています。
表1 5項目での観点別性能評価例
項目 | (1) | (2) | (3) |
---|---|---|---|
A | 86 | 100 | 93 |
B | 88 | 89 | 88 |
C | 77 | 77 | 78 |
D | 90 | 80 | 92 |
E | 90 | 83 | 77 |
図1 表1の観点別性能評価例のレーダーチャート
観察でランキング
3つのレーダーチャートを注意深く観察すると、1位は(1)で、最も大きく、正五角形に近いとみて取れます。2位は(3)でしょう。というのは、(2)は、12時の位置にあるAの得点が高く、全体も大きいように錯覚しますが、C, D, Eの得点は概ね80点であり、(3)より評価が低く3位となり、ランキングは、(1)、(3)、(2)でしょう。
しかし、このランキングに確証はありません。どの程度の差かは、観察だけでは分かりません。観察は全体を把握するために欠かせませんが、残念ながら錯覚という落とし穴も潜んでいます。
総得点でランキング
総合評価として総得点を求めると、(1) 431点、(2) 429点、(3) 428点であり、ランキングは、(1)、(2)、(3)となり、観察とは一致しないランキングになっています。総得点は視覚的にとらえた特性とは異なる特性を表す指標と考えられます。
RC-POWERでランキング
RC-POWERを計算すると、(1) 85.7%、(2) 83.8%、(3) 85%であり、各項目の得点が高く、バランスがよいほど大きくなり、ランキングは、(1)、(3)、(2)であり、観察と一致します。
観察とRC-POWERでのランキングは一致する
上記のランキングを表2にまとめます。
表2 観察、総得点、RC-POWERでのランキング
仕様 | 1位 | 2位 | 3位 |
---|---|---|---|
観察 | (1) | (3) | (2) |
総得点 | (1) | (2) | (3) |
RC-POWER | (1) | (3) | (2) |
観察とRC-POWERでのランキングは一致し、総得点では2位と3位が逆転しています。
この例のように、総得点でのランキングがレーダーチャートとともに発表されると、計算で確認できるため異論はないものの、観察によるランキングとは異なるため疑問が湧いてしまいます。
このとき、観察と一致するRC-POWERでのランキングが示されれば、順位に得心が行きます。
RC-POWERによる統合値は、レーダーチャートの形と大きさからバランスよく高得点かの程度を計算しているため、観察して視覚的にとらえる特性と相関します。
一方、総得点は、レーダーチャートのバランスに対応する幾何学的特性と必ずしも相関するものではないため、総得点でのランキングは観察とは異なり、順位に疑問が湧くこともあり得ます。
RC-POWERと総得点の違い
総得点を満点500点に対するパーセンテージ (1) 86.2%、(2) 85.8%、(3) 85.6%として、RC-POWERとともに順位に従って図2に示します。
図2 順位にみるRC-POWERと総得点(パーセンテージ)
RC-POWERでは、1位 と2位で0.7%、2位と3位では1.2%の開きがありますが、総得点では、1位と2位で0.4%、2位と3位で0.2%と軽微な差となっています。
RC-POWERでの2位と3位での大きな値の開きが、何に起因するのか考えてみます。各商品での5項目の平均と標準偏差を表3に示します。
表3 平均と標準偏差
(1) | (2) | (3) | |
---|---|---|---|
平均 | 86.2 | 85.8 | 85.6 |
標準偏差 | 4.8 | 8.1 | 6.8 |
(2) と (3) で平均での差は軽微ですが、標準偏差は(2) は (3) より大きくなっています。このバラツキが影響して、RC-POWERでは(2) 83.8%、(3) 85%となり、(2) は (3) より大きく低下しています。
RC-POWERでまとめるで示したように、RC-POWERは平均とバラツキが一元化された指標であるため、総得点より得点差のあるランキングとなります。
まとめ
RC-POWERでのランキングには、以下の特徴があります。
- 私たちの観察と一致するランキングであり、順位に得心が行きます。
RC-POWERがレーダーチャートの形と大きさを視覚的にとらえた特性と一致するためです。 - 客観的です。
RC-POWERが観察に潜む錯視の影響を受けない客観的な指標であるためです。 - 説得力があります。
平均とバラツキが一元化されているRC-POWERは、順位に大きな点差を提示でき、順位の根拠が明確になるためです。